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売家・売土地の泉

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「旅の終わりには何もかも無事な状態で引き渡すのが自分の責任だから」
馬子(まご)

委託者・受託者・受益者・信託管理人 

委託者

 財産を保有する人であり、なおかつ家族に財産の管理を託す人です。

すでに認知症やその他の精神上の障害により契約をする能力のない人は委託者になれません。

委託者は、信託財産の管理・処分方法について、様々な定めを置くことができます。

受託者を解任したり、受託者が欠ければ次の受託者を選んだりします。

信託契約を委託者と受託者の間で締結し、不動産を受託者名義に変更し、金融資産は受託者名義の信託口口座に委託者の口座から移します。

人に寄り添う心のある人は、それだけで周囲から1目置かれ、好かれる。
本田 健(作家)

受託者

 財産管理を託される人です。

受託者は個人でも法人でもなることができますが、個人の場合、未成年者・成年被後見人・被保佐人は受託者になることはできないとされています。

委託者から託された財産について多くの権利を有していますが、受託者ができることは、信託契約書に書かれていることだけです。

受託者には、次のような義務が課されます。

・信託事務処理義務

 信託の本旨に従い、信託事務を処理しなければならない。

・信託事務の自己執行義務

 受託者は原則的に自ら信託事務を執行することが必要になります。

・善管注意義務

 「善良なる管理者としての注意義務」の略です。

これは取引通念上客観的に要求される十分な注意義務であり、自身の財産に対する管理よりも注意レベルが高いものです。

 ただし信託行為に別段の定めがあるときは、これを制限することができますので、受託者の注意義務を軽減又は加重することが可能です。

受託者が善管注意義務を怠った場合には、損失補填責任や原状回復責任を生じさせ、受託者の解任事由としての効果を有するものになりえます。

・忠実義務

 受託者は、受益者の利益のためにのみ行動すべきであるという義務です。

・公平義務

 同種の複数の受益者は公平に取り扱う必要があります。

・分別管理義務

 受託者固有の財産と信託された財産を分けて管理する義務です。

受託者が破産しても、信託財産は分別管理なので影響はありません(信託の倒産隔離機能)。

具体的には、不動産を信託する場合は信託登記、動産は外形上区別して管理、金銭その他は帳簿等により計算を明らかにする必要(実務上は信託口口座を開設することが多い)があります。

・自己執行義務

 受託者は、委託者からの信頼に基づき信託財産の管理・処分を託されているため、原則として信託事務を他人に代行させることができず、受託者自らが信託事務を遂行すべきとされています。

ただし、一定の場合には、第三者への委託も認められています。

・第三者の選任・監督義務

・帳簿作成・保存・報告義務

 受託者は、帳簿(貸借対照表、損益計算書その他の関係書類)や財産目録を作成し、原則として毎年1回受益者に報告する義務。

 受託者は、信託帳簿を作成した日から10年間の保存義務や閲覧請求があった場合の開示義務もあります。

・損失補填義務

 財産に損失が出た場合には補填又は原状回復義務を負います。委託された財産を使い込んだり、自分の借金の返済などに充てたりした場合は、その分を弁償する責任があります。

受託者に万が一のことがあった場合に備えて、後継受託者の定めを設ける必要があります。

・受託者の無限責任

・利益相反行為の禁止

 禁止に反して行った取引は、原則無効になります。

・競合行為の禁止

 受託者としての行為と、自らの行為が同内容の場合には、自らの行為を優先することは禁止されています。

「行く秋や恋のボールは楕円形」
米子市・門脇かずお

●受託者の権限の制限

 受託者が扱える権限は、信託契約で、制限を加えることができます。

受託者が権限外の行為をした場合には、受益者に当該行為の取り消し権も認められています。

 

●受託者の報酬

 信託契約において信託報酬の定めを設けることにより、受託者は信託財産の中から信託報酬を得ることができます。

結果として、信託財産を合法的に減らすことができます。生前贈与と同じように相続財産を減らし、相続税対策として活用することができます。

ただし、報酬の額をあまりに大きくすると税務上みなし贈与などの税務署から贈与税を指摘されるリスクがあるため、多額の報酬を設定する際は、税理士と相談しながら報酬を定めてください。

 

●信託契約期間中に受託者が死亡した場合

 受託者の権利義務はその受託者の相続人には相続されません。

ただし、信託が終了するわけではありません。

信託契約で、新受託者となるべき者(後継受託者)の指定がされていれば、その者が信託を引き受け信託事務を行います。

2次受託者の定めがない場合は、委託者及び受益者が新たな受託者を定める必要があります。

利害関係人が裁判所に新受託者の選任申し立てをすることもできます。

新受任者が就任しない状態が1年間継続したときは、信託は終了します。

状況によっては、受託者を法人にすることも対応策として考えられます。

 

受益者

託された財産の運用で発生する利益を受け取ることができる人です。

受益者には誰でもなることができます。委託者がなることもできれば、特定の法人や第三者、胎児、などを受益者に指定することもできます。

信託された財産から生じる利益は「受益者」のものになるため、「受益者」にかぜいされます。これを「受益者課税の原則」と言います。

異時的に受益者を定めることもできます。例えば、最初は夫が受益者、夫が死亡した場合には妻が受益者になるようなケースです。(受益者連続型)

受益者は、その性質がこれを許さないときを除き、受益権を譲り渡すことができます。

 

●受益者が死亡した場合

 受益者が死亡した場合、次はだれを受益者に指定するのかを信託契約の中で定めている場合にはそれに従います。

受益者が生前に受益権の相続について記載された遺言書を作成していた場合にはその遺言書に従います。

信託契約に定めがない場合には、受益権は受益者の相続人に相続され、その権利を遺産分割によって承継したものが新受益者になります。

「海を知らぬ少女の前に麦藁帽のわれは両手を広げていたり」寺山修司

受益者代理人

 受益者代理人は、受益者の信託法上の一切の裁判上または裁判外の行為をする権限を有する人です。

受益者代理人は、誠実且つ公平であること(誠実公平義務)とともに、善良な管理者として権利行使をしなければなりません(善管注意義務)。

受益者代理人は、信託行為におい委託者の意思に基づき選任される者であり、利害関係人の申し立てを受けて裁判所により選任される方法は規定されていません。

受益者が重度の知的障碍者であったり認知症であったりする場合などに活用します。

受益者代理人を設定すると、受益者の権利行使ができなくなります。

受益者代理人は、信託契約に受益者代理人が報酬を受ける旨の定めを設けることにより、報酬を請求することができます。

 

〇受益者代理人になることのできない人

・当該信託の受託者

 

信託管理人

 受益者が現に存在しない場合に、受益者に代わって信託を管理する人です。

現に存在しないとは、受益者が胎児等に当たる場合を指します。

信託管理人は受益者が有する信託法上の一切の権利を行使できます。

信託管理人は、信託行為において指定するか、利害関係人の申し立てにより裁判所に選任してもらいます。

 

 ⑥信託監督人

 信託監督人は、受益者が現に存在する場合に、受益者が有する受託者を監督する権限を行使します。

受益者が自分で受託者を監督できない場合に信託監督人が指定されます。 

信託監督人は、受益者の権限行使を補完する存在であり、信託監督人が選任されていても、受益者は自らの権利を行使することが可能です。

受益者が年少者や高齢者、知的障碍者であるような場合には、信託監督人の存在が重要性を増します。

信託行為に信託監督人の定めがない場合や、信託監督人に指定されたものがその就任を承諾しない場合などには、利害関係人の申し立てにより裁判所が信託監督人を選任することができます。

信託監督人には許可・免許は不要です。

信託監督人は、信託契約に信託監督人が報酬を受ける旨の定めを設けることにより、報酬を請求することができます。

 

帰属権利者

 信託が終了したときに、信託財産(残余財産)を引き継ぐ人のことです。

帰属した財産は、帰属権利者固有の財産になります。

帰属権利者は、信託契約で指定しておくことが可能です。

帰属権利者の定めがない場合や、帰属権利者がすでに亡くなっていた場合、または、帰属権利者が受け取りを拒否した場合は、信託財産は当初の委託者もしくはその相続人に戻ります。

委託者の相続人等も帰属権利者とならなかった場合には、清算をした受託者が帰属権利者になります。